テクノDJのプレイ時間について
2012年1月16日 17:40
次回、1月22日の「BI」には、3人のDJが出演します。それぞれの持ち時間は「100分」。最近のアマチュアDJによるパーティーでのプレイ時間は、多くが50分や60分、短いものでは30分なんていうケースもあるので、100分は比較的長いほうだと思います。
今回は、なぜこのプレイ時間を設定したのかについて、書いてみようと思います。
60分では短すぎる!
そもそも、自分の感覚値として、60分は短すぎるんです。
出演順や時間帯にもよりますが、通常ひとつのセットのなかで流れを考える場合、大きい山場を2つくらい作るのが理想というのが、私が諸先輩から教わってきた考えかたです。前のDJの流れを受けて展開させ、いったんピークを過ぎたら落として少し流れを変え、そこから更にビルドアップしてゆく感じ。いや、必ずしもその曲線を辿らないとしても、パーティー全体の流れを踏まえた適切な選曲をしつつ、なおかつ自分のカラーを出してゆくためには、やはり60分では足りないんです。
2011年、荒天のため中止になった『METAMORPHOSE』に出演予定だったアーティスト「2562」のインタビューの冒頭に、象徴的な一節があったので引用します。
その日、LUNAR STAGEに出演予定だった2562ことDAVE HUISMANの1日の予定は目まぐるしく変わる。その晩、幸いにも都内のクラブ、UNITでのプレイが決まったが、2時間だったプレイ時間は1時間と短くなった。「1時間ではDJの流れを作りきれない。」と、やむを得ずライブセットへと変更となったが、DAVEにとっては、実に史上6回目のライブセットだという。夕方の6時だから、あと5時間ほどある。アテンドのユウサク氏はライブのための機材を探しに楽器店を走り回ることになる。
2562 Interview | クラベリア
もちろん、30分の持ち時間で上手くまとめてくださいと言われれば、できます。できますが、それだとパーティーの総体として、どうやってもサウンドに一貫性が生まれることはありません。それはショウケース、いわばDJのカタログのようなものであって、それはそれでお祭りとして楽しいのでしょうが、自分が過去に体験してきた、優れたテクノパーティーとは決定的に異なる「別のもの」です。映画のあらすじだけを読んでも、作品を観たことにならないのと同じことです。
DJが多く、プレイ時間が短いパーティー
このように、30分とか60分とか、プレイ時間の短いショウケース的なパーティーが多いことに、DJ側からの要請が影響しているとは思えません。多くのDJは、せっかく人前でプレイできるなら、ある程度長い時間プレイしたいと考えているでしょう。この理由は、オーガナイザー側の事情を鑑みるとよく分かります。
通常、クラブを借りてパーティーをオーガナイズする際は、一定の費用がかかります。その大部分を占めるハコ代をペイするためには、言うまでもなく、できるだけ多く集客する必要があります。
一方で、DJという趣味への参入障壁が低くなったことにより、おそらくアマチュアのDJは以前よりも増えました。出演機会を求めるDJが多数いるなか、DJ枠を増やすということは、彼らの友人知人のネットワークによる集客を、暗に期待していると言えます。要は、各人の持ち時間を減らして出演者を増やすことは、オーガナイザーにとって、それだけで赤字リスクの回避に直結する場合が多いのです。
もちろん、赤字回避は大きな課題です。日本ではヨーロッパと異なり、多くのオーガナイザーが個人で企画運営を行い、趣味の一環としてポケットマネーを投じているからです。
「BI」も、そうした普通のパーティーのひとつです。
それでも妥協したくない
私たちは過去、価値観を根底から揺すられるような強烈なパーティー体験をいくつも経験し、テクノにおいてどういうパーティーが理想であるかのビジョンを持っています。カタチにするのは簡単なことではありませんが、それは少なくとも、DJが多いことで流れが分断される、ショウケース的なパーティーではないことは確かです。私にとって、リスク回避のためにそうした選択をすることは、自分の追求するテクノに対する不誠実であって、妥協です。
では、60分が短いとすれば、何分くらいが適切な、もしくは最低限のプレイ時間といえるでしょうか。「BI」では、立ち上げ時のコンセプトのひとつとして、これを仮に「80分」と設定しています。この値は、あくまで個人的な感覚値に基づくものであり、またジャンルによって大きく異なるはずですが、ことテクノに限って言えば、それなりに場数を踏んだDJの総意から、そう大きく外れるものではないと考えています。
今回の「100分」という各DJのプレイ時間は、これにバッファを加えた、それなりに十分な単位のつもりです。もちろん、これに加えて、持ち時間を適切に活かすことができるDJが居て初めて成立するものですが、その人選にかけては自信を持っています(11月の前回のときも同様)。
「BI」では、誰もが盛り上がる決まった曲もかからないし、特別な共通言語も必要ありません。フロアは薄暗く、極端な話、誰とも話す必要もありません。ただ、音と音との連続的な繋がり=グルーヴが、パーティーの間中、途切れないことが絶対に必要です。
繰り返しになりますが、DJの多い、ショウケース的パーティーがあってもいいし、あらゆる形態のパーティーがあっていいのです。ただ同様に、いろいろなパーティーがあるなかで、「BI」のようなオプションがあってもいい。
自己満足かもしれませんが、自分が満足できないものを提供しても意味がないですよね。
